『吹きさらう風』
セルバ・アルマダ著
松籟社
2023年10月14日刊行
アルゼンチン辺境で布教の旅を続ける一人の牧師が、故障した車の修理のために、とある整備工場にたどりつく。
牧師、彼が連れている娘、整備工の男、そして男とともに暮らす少年の4人は、車が直るまでの短い時間を、こうして偶然ともにすることになるが――
ささやかな出来事のつらなりを乾いた筆致で追いながら、それぞれが誰知らず抱え込んだ人生の痛みを静かな声で描き出す、注目作家セルバ・アルマダの世界的話題作。(版元ドットコムより)
メキシコのグアダルーペ・ネッテルに続いて、ラテンアメリカの女性作家の翻訳第2弾として、この10月にアルゼンチンのセルバ・アルマダの作品を翻訳出版することができました。
この本と出会ったのはマドリードのTipos Infames という本屋さん。もっと女性作家の作品を読んでみたいと思って、書店員さんにオススメをたずねたところ、紹介してくれました。
ある場所に偶然生まれおちて、生きていくわたしたち。
アルゼンチンの辺境を舞台としたこの小説を読んでいると、生きていくことの不思議を思わずにはいられません。
ローカルな物語が、深く深く普遍に通じています。
この本の感慨は語りにくいのですが、マッカラーズの『結婚式のメンバー』の読んだときのような、どこかシーンとした気持ちになりました。
こういう小声で語られた、けれんみのない作品がとても好きです。
松籟社の木村さんと仕事をしてみたくて京都を訪ねたのは、パンデミックで1年が過ぎた2021年3月31日のことでした。京都の駅前のホテルの喫茶室で見ていただいた2点のなかで、派手さから無縁のこの作品を「やりましょう」と言っていただけて、天にものぼる心地でした。
ていねいに訳稿も見てくださって、とても気持ちのよい仕事でした。
一言で語れるわかりやすい売り文句がない本は、なかなか注目されにくい昨今ですが、長く読みついでいただけますようにと願っています。
読み終えました、すごく良かったです。日本語で読めて幸せでした、スペイン語だったら一気に読めなかったと思うからです。ご紹介頂き、ありがとうございました。
返信削除高橋さま ありがとうございます! 訳者冥利につきます。
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