2019年6月8日土曜日

再び片付けの日々

昨年、両親の住んでいたマンションを処分するために、夏にかけて姉とやっきになって3LDKの片付けをしたのだが、今年は、現在長男と長女が住んでいる家族のマンションの大規模リフォームをすることになり、またしても片付けに追われている。

「こんなにあれこれ買い込んで」と、昨年毒づいていたのだが、今は、自分がまぎれもなく母の子であることを再認識しつつある。
5年前に出たとき、彼らも使うだろうと思って残してきた保存食品や掃除用品は、ほとんど使われないままで、代わりに、界面活性剤が入った洗剤類や、匂いのする柔軟剤や、合成保存料や調味料がいっぱい含まれていそうなインスタント食品など、私の嫌いなものがそこらじゅうにある。
自分の跡など残さず、この際、パーッと思い切って何もかも捨ててしまえという気がしてきた。

「何から捨てようか」から、「ともかくとっておきたいものだけとっておこう」とだんだんと考えが変化していくのは、昨年と同じ。そうなると、ゴールは近い。

そこで、大事なものだけ回収してきた。
まずは、20代の頃に買った陶器の置物。神保町のカフェテラス古瀬戸がオープンして間もない頃に開催された、瀬戸の美夜之窯の作品展で一目惚れして買ったものだ。



体に星のもようのあるアステカ犬。病気になったとき、この犬を抱いていると熱がさがるのだとか。当時メキシコとは縁がなかったのだが。
独り住まいの玄関の下駄箱の上にのせる。もっと早く連れてきてやればよかったと思うほど、ぴったりおさまった。

居間のキャビネットの引き出しには、ちびた鉛筆がまだまだどっさりあった。これも、選り分けて持ち帰る。

死ぬまでに使い切れるのだろうか。
捨ててもよさそうだが、こうなったら意地だ。
ここ数年で、もうこんなに↓   使ってきたのに!
鉛筆のために長生きしよう。


引き出しにしまいこまれていた、ドイツ製の木のおもちゃも持ち帰った。


一番大きい木も5センチくらいしかない、かわいい森。買うときに、安全な塗料が使ってあると言われた覚えがある。
家の屋根にする青い三角のパーツだけ1つ足りないけど、いつかだれかにプレゼントしよう。

考えが変わって、捨てることにしたものもある。
スペインにいた頃に子どもたちが図画工作で作ったものを、段ボールに入れて押入れにつっこんであったが、今日見たら、もういいかなという気持ちになった。
お別れに、写真でだけ残しておくことに。たとえば、こんなものたち。





6月末にはリフォーム開始。自分が住む可能性は少ないけれど、楽しみだ。


2019年4月25日木曜日

バスクの旅(3) サン・セバスティアンその2

サン・セバスティアンについても、書店情報、図書館情報を金子奈美さんにいただきました。ありがとうございます!
最初に行ったのは、Lagun(Urdaneta Kalea, 3)という老舗の本屋さん。夜だったのでうまく撮れず、写真がありませんが、文芸や人文関係など、市内で一番品揃えがよかったのがここでした。黙って長いこと本を選んでいるお客さんの多い、居心地のよいお店でした。

スペイン語が読める方は、こちらの記事を参照してください。

次に行ったのは、Donosti。川から大聖堂方面に向かうロータリーにある小さいお店。ビルバオのCámara と似たような印象です。
店員さんと会話しながら、「じゃあ、今日はこれにしておく」という感じで買っていくお客さんがちらほら。


いちばん好きだった書店はなくなってしまったが、そこの元店員さんが店を構えているという説明を受けて訪ねたのはTabacco Days.
鉄道駅とバスターミナルに面した、昔のタバコ工場を改装して作られたTabakalera という文化センター内の小さなしゃれたセレクトショップです。

Tabacalera の2階から見たところ。Tobacco Days は1階にあります。

文芸の最新刊や、フェミニズム、グラフィックな本など、ほとんどの本が面出しで並んでいます。


『Los animales eléctricos でんきどうぶつ』が、早くも並んでいました。
髪色がピンクの女性の店員さんに、何か勧めてくれないかとたずねてみたら、それまでまったく目をとめたことのなかった、若い作家の小説を教えてくれました。「この出版社、おもしろい本を出しているのよ」とのこと。


たまには大型店も行ってみようと、Fnac にも立ち寄りました。このところ気になっているグラフィックノベルの棚が、マドリードのFnac よりも見やすく並んでいました。Fnacは、フランス系の書店ですが、Salamandraという出版社とともにコミックの賞を主催しているので、力を入れているのか。

図書館も足を運びました。Koldo Mitxelena図書館。大聖堂の裏手です。


気力が尽きて、文学や児童書の蔵書を、1冊1冊見ることはしませんでしたが、開架で多くの本を見られるのはうれしい。ウィークデーの午前でも、館内は結構にぎわっていました。ふらっと立ち寄った雑誌のコーナーで、パラパラと読書雑誌を見ていたら、おもしろい記事を見つけ、コピーできたのは思いがけない幸運でした。
地下は展示スペースになっていて、世界の図書館の展示をしていました。

ちょうどその日の夜、図書館のホールで、Bertrand H. Carpentey という地元の作家のLa gran guerra という作品の音楽つきの朗読会があるのを知り、行ってみました。ピアノ演奏をさしはさんだ、スペイン語の朗読で、二人の兄弟のお話を堪能しました。

サン・セバスティアンに着いてから、以前読んだAntonio Muñoz Molina のEl invierno en Lisboa (評価が高い小説だけれど、男性目線の展開が好みではなかった……)の舞台の1つがサン・セバスティアンだったと思い出しました。出てきた地名のうち「憲法広場La plaza de la constitución」だけ、かろうじて思い出して訪ねてみましたが、駐車場として使われていて、何の風情もありませんでした。モデルになったジャズの店は、どこにあったのか。
旧市街には、興味深いお店がいろいろありましたが。

バスクのおじいさんと言えばベレー帽

種屋さん
老舗の菓子店



1日1万5000歩をこえる町歩きで疲労困憊し、夜は2ユーロのグラスワイン1杯で眠気に襲われ、タパスを1つつまんだだけでホテルに直行した2日間でした。



2019年4月23日火曜日

本が主役になる日 サン・ジョルディの日に寄せて



今日は、スペインのカタルーニャ地方で、町じゅうが本とバラ一色に染まる日、「サン・ジョルディの日」です。

 バルセロナでサン・ジョルディの日にもらった冊子によると、『ねずみとおうさま』(岩波書店)の主人公である国王アルフォンソ十三世が、スペインで最初に「本の日」を定めたのは1929年のこと。残念ながらこの試みは定着しませんでしたが、カタルーニャ地方では1930年代から、守護聖人、聖ジョルディと結びつき、この日に、女性は男性に本を、男性は女性に赤いバラを贈るようになったとあります。

でも、本を買うのは女性に限りません。現地では当日、市内の目抜き通りや広場に本の露店が出て、道行く人々でにぎわい、大型書店では人気作家がずらりと並び、サインをしてくれます。学校では、詩や創作、朗読の大会などが催されます。

紙とインクでできた本を、自分のものとして持つ喜び――サン・ジョルディは、そんな幸福感に触れられる、本が主役の一日です。恋人や子どもたちに、家族に、そして自分に、本をプレゼントしてはいかがでしょう。

バルセロナ留学中のこの日、修理した車をとりにいった車の販売店で、赤いバラをもらって感激したのを今でもおぼえています。本は買っても、自分にバラを買うことは考えていなかったので。バラの花には、カタルーニャの旗と同じ、黄色と赤の細いストライプのリボンが結んでありました。


2019年4月21日日曜日

バスクの旅(2)サン・セバスティアン その1

ビルバオの後、2日間、サン・セバスティアンを満喫しました。

サン・セバスティアンの目玉は、エレナ・オドリオソラと会ったこと。
彼女の絵本はこれまでに『天のおくりもの』『あくびばかりしていたおひめさま』『アリアドネの糸』(いずれも光村教育図書)を訳しています。



前にこのビデオを見て(バスク語)、橋と川を見下ろす場所に住んでいるのだなと思っていましたが、その橋はスリオラ橋だと、今回の旅でわかりました。


「エレナに会うなら、ミケルにも会えばいいのに。友だちのはずだ」と助言してくれたのは、バレンシアの出版社メディアバカのビセンテ・フェレール。ミケルとは、この7月にあかね書房から刊行になるメディアバカの絵本シリーズ「あしたのための本」の2冊目『独裁政治とは?』のイラストレーター、ミケル・カサルです。
そんなわけで、サン・セバスティアンではまず、このお二人に会いました。

作品から、エレナは物静かな人と思いきや、とても早口でおしゃべり。気さくにさまざまなことを話してくれました。


エレナの最近の作品というと、物語を独自に解釈して口絵で展開した『フランケンシュタイン』、


バスクのクリスマスを描いた『エグベリア』、

アナ・マリア・マトゥーテのアカデミア入会スピーチをカードの絵本にした『森のなかで』など、

変わったフォーマットのものが続いていますが、それらはすべて、彼女自身のアイデアだとのこと。
「大きさはこうで、32ページで、みたいなのはいや」とのこと。

でも、ネルーダの『星へのオードOda a una estrella』、コルタサルの『雨粒がつぶれるAplastamiento de las gotas』、アルゼンチンの詩人アルフォンシーナ・ストゥルニの『土曜日Sábado』は、テクストを解釈がすばらしくて、普通の絵本形式だって、どれも彼女にしか描けない境地に達しているというのに! 
大人の絵本として、この3冊、どこかで出してくれないかなあと、ずっと思っています。



「でも、本にすると思ったようにならないの。今の技術なら、なんでもできると思っちゃうんだけど、そうはいかなくて。ここだって、実物の赤はもっと深くてきれいなのに」と、『森のなかで』の印刷の出来栄えは満足していないようす。
『エグベリア』は、とても好き、とのことでした。

「日本でだって、あなたと仕事をしてみたい編集者はいっぱいいますよ」と言ったら、「とても興味がある」とのこと。「だけど、思い切った形式を提案されたら、みんな困ってしまうかも」と言ったら、笑っていました。

ミケル・カサルの絵も、ぜひ7月に新刊絵本で見てください。こちらが原書です。

ミケルは似顔絵がうまく、この本の見返しには、世界の独裁者の似顔絵が並んでいます。会ったときも、だれか人物のことに話が及んで、私がぽかんとしていると、「こんな人だよ」と、さささっと、ノートに顔を描いてくれました。

この本のイラストレーター紹介文からも、ミケルのサン・セバスティアンへの愛を感じますが、夕方6時ごろ別れたときに、「これからの時間は、コンチャ海岸のほうに歩いていくときれいだ」と、道案内をしてくれました。彼がすすめてくれたウルグル山に登れなかったのが心残り。

日暮れのコンチャ海岸


帰国してから、エレナ・オドリオソラが2020年の国際アンデルセン賞、スペインから画家賞に推薦されたというニュースが入りました。今度はどうかな。

サン・セバスティアンの書店と図書館のことは、また次回。


2019年4月16日火曜日

バスクの旅(1)ビルバオ

この2月、はじめてバスクに行ってきました。
会いたい人たちと、移動手段を考えて調整し、結局、東京 → (パリ)→ ビルバオ→サン・セバスティアン→ビトリアという旅程になりました。

仕事か観光かと問われたら、「観光だけなら行かないから、どちらかというと仕事かな?」くらいのスタンスの旅。書店は寄りたいので、バスク語の翻訳家の金子奈美さんから、ビルバオとサン・セバスティアンの書店と図書館のことをいろいろ教えていただきました。ありがとう!

ビルバオでまず最初に向かったのは、Anti Liburudenda。土地勘がつかめず、旧市街をぐるぐる歩きまわり、くたびれ果ててとびこんだこちらのカフェに、




こんな本のコーナーが。だれでも、自分が読んだ本を置いていってもいいし、気にいった本があれば持っていってもいいとのこと。


このカフェで道順を教えてもらい、ようやくAntiに到着。
ANTIの文字が逆さまになっているロゴです。


文学、思想、デザイン、美術、グラフィックノベル、絵本、同人誌など。多くが面だしで並んでいるセレクトショップ。今回の旅で1軒目だったこともあって、じっくりゆっくり見せてもらいました。
下の1枚目の右上のほうには、ちょうど今私が手がけているMujeres y hombres (邦題『女と男のちがいって?』7月刊)も見えています。



2005年開店から14年、だんだんと売り上げは伸びていて、なんとかやっていると店主のお兄さんが言っていました。
オススメの本をたずねたら、Cristina Morales のLectura Fácil (←松本健二さんのブログをどうぞ)やSara Mesaをすすめられました。この2人の女性作家のものは、独立系の店でも大型店でも、どこでも必ずおいてありました。ここならではのものはないかと、なおもたずねたら、ビルバオの旧市街の道のことを書いたPablo Gallo(パブロ・ガリョ)のSiete días en las Siete Calles (シエテ・カリェスでの7日間)という本を勧められ、購入しました。
2018年に旧市街のSiete Calles を訪れた著者が、線画のイラストと文章で綴った本。
これを読んでからビルバオをたずねたら、さらにおもしろかっただろうと思います。


 
 その夕方には、ASTARLOA という古書店へ。
間口はこれだけですが、中は広く、2階もあります。
ここでは、児童書の古書を見せてもらい、『ねずみとおうさま』のコロマ神父のPelusa(ペルーサ)という本を購入。30ユーロ。初版は1912年だけれど、これはたぶん1940年ごろのもの。


50ユーロで、子どもの手書きのメモが挟まっている『ゆかいなセリアCelia, lo que dice』の初版本があって心ひかれましたが、テキストは持っているし……と、あきらめました。
2階には、何百年も前の写本のようなものが、手にとれる場所に並んでいるコーナーも。


入り口の営業時間や「本買います」の表示もおしゃれでした。

日が暮れてきてから、Camaraという店へ。


文学や人文系の本が充実した、昔ながらの本屋さんというたたずまいのお店。
ショーウィンドーの左下にあるのは、『コンビニ人間』のスペイン語版。出版されたばかりで、たいていのお店に並んでいました。

最後にたずねたのは、Louise Michel。


文芸書のほか、人文系や芸術系の本が多い印象でした。やはりセレクトショップ。

そのほか、Sopa de sapo という児童書店、バスク語の出版社でもあるチェーン店Elkar 、全国チェーンのCasa del libro、コミック専門店Joker、古本屋Boulandierものぞきました。

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ビルバオは、私が初めて訳した絵本『かちんこちんのムニア』のアスン・バルソラの生まれた街。スペイン児童文学史上、非常に大きな存在だった作家なので、彼女の本に出会うこともあるかなと期待していたのですが、亡くなって10年以上たつからか、生地のビルバオでも本をぜんぜん見かけなかったのは、ちょっと寂しかった。

ビルバオからサンセバスティアンまでのバスの車窓から見える風景が、ムニアのお話を思い出させてくれたのがせめてもの慰めでした。