2021年2月19日金曜日

西日暮里BOOK APARTMENT に出店します!


 

翻訳のスピンオフのようなかっこうで2007年秋に始めた、オンラインのスペイン語の児童書専門店ミランフ洋書店が、このたび、西日暮里駅前の西日暮里BOOK APARTMENT に入居することになりました!

入居といっても、31cm角の本棚です。
もちろん、これまでどおりオンライン書店は続けていきます。

これまで、実物が見たいが店舗はどこかと聞かれることがたまにあり、そのたびに店舗はなく、本は保管ケースに入っていることを説明してきました。1年に1ぺんでも、イベントに出店するとか、棚貸ししてくれる場所を探すとか、何か方法はないだろうかと思っていたところ、新聞で西日暮里BOOK APARTMENT のことを知りました。
実際に見にいったところ、これがおもしろい空間で、この中に並んだらうれしいなあと思いました。
さっそく申し込み、OKが出て、トントン拍子で入居の運びとなりました。

こういうスペースはほかにもあるのでしょうけれど、自分でしょっちゅう行けるところでないと、翻訳や授業が忙しくなると足が遠ざかり、補充ができなくなりそうです。
その点、ここなら歩いて20分ほど。散歩に最適。
小さなスペースですが、定期的にテーマを決めて並べたり、ワケありの本を格安で並べたりと、楽しみながら挑戦してみようと思います。    
絶版になった私の訳書も(現在手に入るものは、本屋さんで買ってくださいねー)置くかもしれません。

こちらが、西日暮里BOOK APARTMENT のサイトです。

基本、水曜日から日曜日の11時半から20時までやっています。

初めての搬入は、2月26日(金)です。
棚のようすは、instagram twitterで随時お知らせしていく予定です。

少し慣れてきたら、1日店長もしてみたいですが、まずはよくばらず、楽しんで棚をつくっていきたいと思います。

どうぞお楽しみに!

2021年2月16日火曜日

マルセロ・ビルマヘール『見知らぬ友』

 

『見知らぬ友』
マルセロ・ビルマヘール著
オーガフミヒロ絵
福音館書店
2021.2.15初版発行

 訳書の点数は50点近くになりましたが、ラテンアメリカ発のYA文学の翻訳はこれが初めて! 記念すべき1冊目となったのは、アルゼンチンの作家マルセロ・ビルマヘールの短編集です。

 2017年11月にグアダラハラ(メキシコ)のブックフェアで見つけて手に取り、読んでまず、「ビルマヘールはcuentista だったんだ!」と思いました。cuentista とは、短編作家ということ。訳者あとがきから、ちょっと引用します。

 この短編集を初めて読んだとき、大きな事件ではなく、日常のちょっとした出来事がさりげなく軽やかに語られていることに惹かれました。時には自虐的に描かれた、とりたててとりえのない主人公の心の動きに共感したり、登場人物たちの人生の悲哀を感じたり、じんわりと心にしみる、快い読後感がありました。また、どの話も落としどころが思いがけなく、短編小説らしいたくらみがあります。

 舞台は、たいていがブエノスアイレスのオンセという地区です。ビルマヘールが脚本を書いた『僕と未来とブエノスアイレス』という映画でも見られる、ユダヤ系の人々が多い街です。

 昨年2月初旬にブエノスアイレスに行ったとき、著者のビルマヘールさんにお会いしました。遊びの旅行だったし、気後れもあって、会わなくてもと思っていたのですが、編集のMさんが、せっかくだから、ご都合だけでも聞いてみてはとエージェント経由で連絡をとってくれて、結局オンセ地区の小劇場でお会いしました。
 すでにひととおり翻訳は終わっていたので、確認したいことや、私が好きなくだりのことなど、1時間ほど話をしました。「ムコンボ」に出てくる「ペロリ」(原文ではChupi)という、カード遊びを実演してくれたり、「地球のかたわれ」のモンテス・デ・オカというのは、実際にそういう苗字の友だちがいたという話をしたりと、よい時間でした。短編のタイトルを日本語版で一部変えることの許可も、そのときもらいました。

 挿絵をオーガフミヒロさんにお願いしましたと編集のMさんに言われて、オーガさんのHPを見たときは、どんなふうになるのか、まったく想像がつきませんでしたが、仕上がってみて納得しました。オーガさんの幻想的な絵が、リアリスティックなビルマヘールの作品と心地よく響きあい、とてもいい感じです。
 装丁は、Mさん担当の前作『太陽と月の大地』(コンチャ・ロペス=ナルバエス著 松本里美画)に引き続き生島もと子さん。いつもながらていねいなお仕事に感謝。カバーをはずすと、中はおしゃれな違う絵が出てきます。地図を入れてほしいという要望にも、ささっとこたえてくださいました。

 実は、この作品は翻訳出版が決まる前、大学の講読の授業でも一部を読みました。学生たちが楽しんで読んでくれたのを見て、いい作品だという意を強くしたのでした。

 物語のおもしろさを知るのに、最適の短編集だと思います。中高校生はもちろん、大人にも手にとってもらえたらと願っています。


ビルマヘールさんと会った小劇場の最寄り駅カルロス・ガルデル駅前の
ショッピングセンター、アバスト内の観覧車

ビルマヘールさんにすすめられて訪れたサン・テルモ地区。
市場のチョリパン屋さんでランチしました。