2022年5月20日金曜日

今のきもち

最終選考対象作品になったときお祝いにいただいたロバ

第8回日本翻訳大賞の受賞作が発表になりました。

昨年翻訳出版されたグアダルーペ・ネッテル『赤い魚の夫婦』(現代書館)に多くの推薦をいただき一次選考に残り、さらに最終選考候補の5冊の中に入りという、昨年の今ごろには考えられなかった展開になりました。

少なくなったとはいえ、1年間に翻訳出版される本は1000点以上にのぼり、話題にならなければ店頭からはすぐに退散させられてしまうことを思うと、昨年8月に海外文学とはあまり縁のなさそうな(?)出版社から出たこの作品が、今も書店の店頭に並べてもらえていること自体、すごいことです。

でも、そういう優等生的な発言の傍らで、あわよくばという気持ちがまったくなかったわけではなくて、発表前の数日間は思った以上に平常心が失われて自分でも驚きました。煩悩にまみれた、ちっこい人間です。だけど、私にとってはとても大きな出来事だったので。

だめだったとわかったあと、編集の原島さんに「残念でした」とメッセージを送ったら、「こんな舞台まで楽しませていただいて、感謝しています」と返事をいただき、ハッと我にかえりました。

ネッテル『赤い魚の夫婦』を多くの読者のみなさま、そして選考委員の方々に読んでいただけたこと、日本翻訳大賞という舞台で翻訳者と読者のすばらしいコミュニティーに入れてもらえたことがとてもうれしいです。

昨日は、長男に残念会をしてもらいました。去年4月15日に「ネッテル、進めたいと存じます」と連絡をもらうまで、しばらくこの本を出せるかわからなかったこととか、刊行前に原島さんと書店まわりをしたこととか、いろいろあったんだよと話しておきたくて。

もうとっくに大人の長男は、何を言っても「この人は、しょうがねえな」と聞いてくれて、すっきりしました。ついでに、20数年前のスペイン留学のとき、9歳の彼はどんな気持ちだったのか話を聞けて、いい夜でした。

残念会はモダンメキシカン カボスで

これからもやることは同じで、読んで、訳すのみ。

「もっと読みたい」「こんな作品があったんだ」と言ってもらえるような本を手がけていけたらいいなと思っています。

ネッテルの次作もあるし、アルマダもあるし、メルチョールもあるし、楽しみなYAもあるし、精進していきます。