2023年7月4日火曜日

『かげふみ』記憶を伝え警鐘を鳴らす

 朽木祥さんの新作『かげふみ』(光村図書)に、『見知らぬ友』が出てきますよ! と編集者さんが知らせてくれたのは6月中旬のことでした。


 時間がかかってしまいましたが、本をとりよせて、ようやく読むことができました。

 朽木さんは、『八月の光』『光のうつしえ』『パンに書かれた言葉』『彼岸花はきつねのかんざし』など、多くの作品でさまざまな形で広島を描き、記憶を伝え、警鐘を鳴らし続けている作家です。

『かげふみ』は、夏休みに広島に住むおばあちゃんのところで過ごすことになった小学5年生の拓海が、児童館の図書室で見かけた女の子「澄ちゃん」をめぐって物語が展開します。児童館で仲良くなった地元の子たちと遊ぶうちに、拓海はこれまで考えたことのなかった、広島のあの夏の出来事と向きあっていくのです。

「おはぎが およめに いくときは……」という歌や広島の方言を織りまぜた文章がみごと。遊びから広がっていくところも好きだな。拓海が石けりをする澄ちゃんを見送った場面は、いつまでも余韻が残りました。

 拙訳のマルセロ・ビルマヘール著『見知らぬ友』(福音館書店)は、拓海が初めて児童館の図書室に行った日、「タイトルと表紙が気に入った本を、カウンターに持っていった。『見知らぬ友』という外国の物語だ。」(p.15)として登場します。

 先日、どこかの図書館のtwitterの新着本写真に『見知らぬ友』が並んでいたのは、この本のおかげかも。物語のなかで物語が生かされる、これほど光栄でうれしいことはありません。

 朽木さん、どうもありがとうございます。

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