2016年5月7日土曜日

El Meninoが『ちっちゃいさん』になったわけ



『ちっちゃいさん』の原題はEl Meninoです。

 menino は、たとえば白水社の『現代スペイン語辞典』をひくと、「[スペイン宮廷で女王・王子付きの]小姓、[特に]若い女官」と書いてあります。

 ベラスケスの名画Las meninas のmenina と同じです。
 だとしたら、このタイトルはいったいどういう意味なんだろうと、原書を手にとったとき、まずひっかかりました。イソールさんは、どうしてこのようなタイトルをつけたのでしょうか。

 アルゼンチンだと違う意味があるのだろうかと、まず疑いました。スペインと中南米のスペイン語は、しばしば同じ単語でも違う意味が持つことがあるからです。そこで、アルゼンチン人の知人にたずねたところ、アルゼンチンで赤ん坊をmenino とは呼ばないが、ポルトガル語で子どものことをmenino というので、El Menino と聞くと赤ん坊のことだと想像がつく、といわれました。

 
 このあたりでなんとなく、このタイトルのココロはほの見えてきたのですが、やっぱりこれは本人に確かめようと、思いきってイソールさんにたずねてみました。
 すると、次のように説明してくれました。
タイトルのEl Meninoは、El Bebé(赤ちゃん) と言っても同じです。だけど、赤ちゃんを言うのに、ここでは違う言葉を使い、un bebé とは一度も言っていません。そこがこの本のミソです。ほかの言葉でもよかったのです。最初はEl Bimboにしようかと思っていました。 イタリア語で赤ちゃんの意味の言葉です。だけど、英語でbimbo というとまるっきり違うものになるし、有名なパンのメーカーの名前でもあるので変えました。El Bambino とかEl Nino にしようかとも考えました。
ちょっと変わってますよね。そうかもしません。でも、あまりヘンなら別の言葉を使ってもかまいません。普通には使われていない名前、だけど、ちょっと調べれば赤ちゃんのこととわかる名前がいいですね。
 こうして考えているうちに思い浮かんだのが「ちっちゃいさん」でした。
 長男が生まれたとき、甥っ子を連れて会いにきた姉が、「xxくんは、ちっちゃい、ちっちゃいね」と言って、長男の頭を2歳にならない甥っ子になでさせていたのが頭に残っていたのかもしれません。
 タイトルについては、編集者さん(あるいは版元さん)の意向で再検討することもよくあるのですが、今回はこのままで通りました。うれしいけれど、ちょっとドキドキしています。

 本文でも、イソールさんにたずねたことはほかにもいろいろあるのですが、それについてはまたあらためて。
 

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