2018年10月25日木曜日

『まめつぶこぞうパトゥフェ』


   『スペイン・カタルーニャのむかしばなし
    まめつぶこぞうパトゥフェ』
   宇野和美 文
   ささめやゆき 絵
   BL出版
ふむなよ ふむなよ パトゥフェがいくよ
スペイン・カタルーニャに伝わる
豆つぶほどしかない小さな男の子のユーモアあふれるおはなし
(帯より)
カタルーニャの大好きな昔話が、ささめやゆきさんの絵で、すてきな絵本になりました! 

「日本の画家さんに絵を描いてもらって、スペインの昔話を絵本にする」という、初めての再話のお仕事をいただいたとき、一番最初に思い浮かんだのがこのお話でした。
 小さな小さな男の子が、踏みつぶされないように大声で歌いながらお使いに行き、1度めはうまくいくけれども、2度目のおつかいで牛に飲みこまれてしまい……、というストーリー。
カタルーニャ語の『パトゥフェ』の絵本と、底本にした昔話集。
 昔話のなかでは、しばしば最も取るに足りなく見える者が手柄をたてます。このお話でも、けしつぶほどしかない小さな男の子パトゥフェが活躍します。すっかり一人前の気分で歌をうたいながらパトゥフェがお使いに行くシーンは、なんともほほえましく痛快です。また、姿が見えなくなったパトゥフェを、お父さんとお母さんが探すシーンは、いざとなったら家の人が来てくれるという安心感があります。
 日本でもこのお話は、小さい人たちが冒険するのを、そっと後押ししてくれそうな気がしました。
 
 ……なんだか小難しくなってしまいましたが、ともかく、まずは絵本を開いて、楽しんでもらえたら何よりです。ささめやさんのパトゥフェは、実に愛らしく、おしゃれでかっこいいのに気取りがなく、それでいて、読む人に心にすこーんと飛びこんでくる強さがあります。どうかかわいがってください。

 パトゥフェがおつかいに行くときに歌う歌は、原書だと
 パティン、パタン、パトゥン Patin, patan, patun
 となっています。
 以前、サン・ジョルディの日に、カタルーニャの人たちの前で、カタルーニャ人の知人と二人でこの本を二か国語で読んだら、このくだりで全員が声をそろえて歌いだしたので、びっくりしたことがあります。
 でも、日本語だとリズムにのりにくいかなと思って、途中原稿では、まったく違う日本語に変えていたのですが、最後は、ちょっと並びをかえて、
 パタン、パティン、パトン
 と、することにしました。
 原書のとおりではありませんが、小さいパトゥフェのはずんだ感じが出せたかな。

 姉の1年生の孫息子は、この本を読んだらとても気に入って、まだ得意ではないカタカナもなんとかして、ひとりで読もうとしていたとか。
 はっきりとした大きな画面なので、学校での読み聞かせにも向いています。明るい気持ちで1日をはじめられるでしょう。

 ささめやさん、そして、最後まであきらめず、美しい刷色を出してくれた編集者さん、ありがとうございました。


 後書きのなかでふれている、カタルーニャのクリスマスの「カガネー」は、こんな人形です。

 丸太の人形が「カガティオー」で、両側のかがんでいるおじさん、おばさんの人形が「カガネー」。おじさんは、パトゥフェと同じ赤い帽子をかぶっています。
 後ろから見ると、おしりが出ていて、その下にしっかりとぐろを巻いているものがあります(笑) カガネーについてもっと知りたい方は、こちらの本をどうぞ。


 
  

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