『一人娘』
グアダルーペ・ネッテル著
澤井昌平装画
現代書館
2025.11.30
わたし(ラウラ)とアリナは親友で、20代のころはお互いに「子どもは産まない」と誓い合った仲だった。その意志をかたくなに貫くラウラとは裏腹に、アリナは結婚し、やがて子ども(イネス)を身ごもる。そんななか、ラウラの暮らすアパートのベランダでは鳩が巣を作り、やがてラウラはアパートの隣に暮らす母子家庭の男の子ニコラスとだんだん交流を深めていく。やがてイネスが生まれるが、イネスには生まれついて重度の障害があり明日を生きる保証もない状態だった。
イネスの誕生とニコラスとの交流、ベランダに巣を作った鳩……、ラウラの心は揺れ動き、本人がそれまで思いもしなかった自らの気持ちに気づかされていく。イネスの生命や母という宿命、女として生きることの葛藤……。そして、物語は思わぬ形で最後を迎えることになる。(「版元ドットコム」より)
メキシコの作家グアダルーペ・ネッテルの3冊めの訳書『一人娘』が、本屋さんに並びはじめました。
『赤い魚の夫婦』出てから4年と少し。「楽しみにしてた」「ネッテルだから」と、手にとっていただけるのがこのうえなくうれしい。楽しんでもらえますように、と指を交差しています。
再校ゲラが動いているころに、編集の原島さんから、荒井裕樹著『増補新装版 差別されてる自覚はあるか 横田弘と青い芝の会「行動綱領」』(現代書館)が送られてきました。ご自身が担当された本。
読むのはネッテルが刊行されてからになってしまったのですが、関連することがあって、なるほどと思いました。荒井さんの本と並行して編集してくれていたのだなあ、としみじみしています。
本作で楽しいのは、おいしそうな料理がちょこちょこと登場すること。日本食レストランのアスパラの牛肉巻きに始まって、松の実とイワシのパスタとか、コリアンダーを散らしたスズキのオーブン焼きとか、お母さんの作るメキシコ風スクランブルエッグとか。
『赤い魚の夫婦』のときに、ナスのパスタを作った私としては、こちらも挑戦してみたいところ。
中心となるストーリーは重いのですが(後書きでも書いたように、友人の体験について考えたくて小説を書いた、とネッテルは語っています)、ラストは晴れやかです。
やっぱりネッテルが好き。訳せて幸せでした。
どうぞ多くの方に読んでいただけますように。

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