2021年12月1日水曜日

アナ・マリア・マトゥーテ『小鳥たち マトゥーテ短篇選』



  アナ・マリア・マトゥーテ著
『小鳥たち マトゥーテ短篇選』
東宣出版
2021.11.12

悲しみ、死、少年少女のやわらかい心に爪を立てる現実。それらを一瞬にして光に変える、たわいのない噓と幻想。小説の魅力を一粒一粒に閉じ込めたような、繊細で味わい深い掌編小説集。(帯文/中島京子)

新しく村に赴任してきた若き医師ロレンソは、ある事情から、気がふれていると言われる女の家に一晩泊まることになってしまう。清潔で手入れが行き届いた部屋、美味しい食事とワイン、町で靴屋見習いをしているという一人息子の話を聞くうちに、彼は大地のようなあたたかさに心満たされ始めるが……「幸福」、過ぎ去りしある夏の淡くおさない初恋を詩情豊かに綴った「隣の少年」、人生に疲れ絶望を感じる寡婦の身に起こる摩訶不思議な出来事「噓つき」、心躍らせながら行ったお祭りで娘を襲う悲劇「アンティオキアの聖母」など、リリカルで詩的なリアリズムに空想と幻想が美しく混じりあう21篇を収録。二十世紀スペインを代表する女性作家アナ・マリア・マトゥーテ本邦初の短篇集。
(版元ドットコムより)


アナ・マリア・マトゥーテの短篇集が刊行になりました。facebookにこんな投稿をしたのは去年の7月のこと(↓画像とクリックすると、別ウィンドウではっきり見えます)。


指導教官の牛島信明先生にすすめられて、大学の卒論を三部作『商人たち』で書いたのがマトゥーテとの出会いです。その後、翻訳の仕事をしたいと先生に相談したとき、マトゥーテの短篇集を訳すことをすすめられましたが、児童文学の翻訳をするようになって月日が流れました。

それが、10年ほど前、短篇を読み直し、改めて魅了されました。そして、上記の記事のようなことになりました。もともとEl tiempo(時)かHistorias de la Artámila(アルタミラ物語)か、どちらかの短篇集を訳すことを考えていたのですが、編集者から、せっかくなら全短篇を読んで選んでみないかと提案され、短篇選集の形になりました。

右は宝物にしている本革貼りの全集5巻本の1冊


長年の宿題をようやく終えた気分です。学部を卒業したときの自分なら訳せなかったかもしれない、今でよかったと、今は思えます。

物語の名手マトゥーテの珠玉の短篇。楽しんでいただけたらうれしいです。

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