2017年2月11日土曜日

ポール・ジンデル『高校二年の四月に』(講談社) ヤングアダルト文学との出会い

 

 ヤングアダルトという言葉も知らなかった高校1年のとき、高校の図書館にあったこの本を偶然手にとりました。「ああ、もっとこんな本が読みたい!」と思ったのを鮮明に覚えています。
 子どもでもなければ大人でもない、自分と同じくらいの年齢の等身大の主人公たちの心理がこまやかに描かれている本に触れたのは初めてでとても新鮮だったのです。ヤングアダルトとの出会いでした。
 世界文学や日本文学も読んでいましたが、子どもではないけれどまだ大人にはなっていない当時のモヤモヤした自分の胸にピッと突き刺さりました。

 タイトルも読んだこともすっかり忘れていたのですが、何年か前に、あれは何という本だっただろうと思い出しました。「高校2年」「4月」というキーワードのほかに、なぜか「平井イサク」という訳者名を覚えていたのは、当時から翻訳者を意識していたからか。
 ところが再読しようにも地域の図書館にはどこにもなく、あるのは国会図書館だけ。いつか行こうと思いながら数年が過ぎ、一昨日、ようやく読めました。
 ああ、こういう本だったんだと、改めて楽しみました。二人の高校生が、あてずっぽうに電話をかけてなるべく長く会話を続けるという退屈しのぎの遊びでおじいさんと出会い、交流するようになる話です。あたりまえに両親がいるのではない家庭環境や一人住まいの老人が描かれていて、古い部分もありますが1968年に書かれた本とは思えない新しさもあり、米国のヤングアダルトの歴史を感じました。

 10代の読者に、「中高校生ならこれも楽しめるよ」と一般読者対象の文学を勧めることもできますが、背伸びは必要だけど、そんなに急がなくてもいいのになとも思います。
 いいヤングアダルト文学は、いつまでも子どもがいいよねということだけではなくて、大人もきちんと描いて、大人になってこれからも続く人生に踏み出すことをそっと後押ししてくれるものだから。
 10代だからこそ心に残る体験を持てる本がまだまだあるんじゃないかな、そういう本を、もっともっと紹介していきたいなと思うのです。

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