バルセロナの日々(11)
到着の日 バルセロナ、プラット空港で |
パリからバルセロナのフライトは2時間足らず。日本からのフライトと比べれば、あっという間だ。
「もう飛行機乗らないんだよね」
着陸したとき、アキコがうれしそうにたずねた。気持ちがよくわかった。
出口に向かう免税店のあいだの通路までくると、勝手を思い出し、私の足取りも軽くなる。今度はこの子たちもいっしょなんだ。普段着に運動靴、水筒をさげリュックをしょった3人がいとおしい。
ふいに、ドラゴンズの青い野球帽をかぶった長男ケンシに、バカンス帰りふうのおじさんが声をかけてきた。戸惑いと照れの入りまじった顔で、「なんて言ったの?」といいたげにふりかえるケンシ。「『おう、チャンピオン!』って言ったんだよ。かわいいと思ったんだよ。だいじょうぶ」
ああ、スペインだなあと思った。通りすがりでも、すっと声をかけてくる人間と人間の距離感。まるで子どもたちへの歓迎の挨拶のように飛び込んできた言葉。アキコは、ピンクのヘアバンドの両側に2,3本ずつ飾りピンをつけてぴっとおでこを出し、ものめずらしげに瞳を輝かせてすたすたと歩き、一番下のタイシは私にべったりとくっついている。
ほんとにようやくたどりついた。来てしまったんだという実感がわきあがってきた。
出口ではハルちゃんが待っていてくれた。ハルちゃんは私たちよりひと足先にバルセロナ入りしていた。喜びいっぱいの再会だった。
電車を乗りついで、サルダニョーラに到着。駅のそばの中華料理屋で奇妙奇天烈な中国料理を食べ、4時半に不動産屋さんに行った。大家さんのマルタはもう来ていた。契約書をひととおり読み合わせて双方でサインをし、1ヶ月分の家賃と1ヶ月分の敷金、1ヶ月分不動産屋さんへ手数料を払ったら手続きは終了。あっけないほど順調だった。
子どもたちと荷物を見るとマルタは、「車で送ってあげるわ」と申し出てくれた。お言葉に甘えて、スムーズにアパートに到着。
アパートの入り口で遊んでいた高学年くらいの男の子が、東洋人の一家を目を丸くして見た。中に入ると、子どもたちは大はしゃぎで家中を見てまわった。「広ーい!」と気に入ったようす。4つあるベッドルームの部屋割りをまず決める。
ハルちゃんに1部屋。私に1部屋。残りのツインとシングルの部屋をどうわりふるかが問題だった。3人とも1人部屋へのあこがれがある。でも、1人で寝ることを考えると、アキコとタイシは尻込みし、1人部屋はケンシのものとなった。
一休みしてから、食料や野菜、トイレットペーパーやシャンプー、シーツなど、当面必要なものを買いにいった。
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