NPO法人イスパニカ文化経済交流協会(イスパJP)主催の「オンライン対談 松本健二x宇野和美 今読みたい! スペイン語圏の女性作家たち ーフェミニズム? マジックリアリズム? それとも……?」が終わりました。
2021年10月3日日曜日
何かを求めて読まないでください
2021年8月13日金曜日
グアダルーペ・ネッテル『赤い魚の夫婦』
初めての子の出産を迎えるパリの夫婦と真っ赤な観賞魚ベタ、メキシコシティの閑静な住宅街の伯母の家に預けられた少年とゴキブリ、飼っている牝猫と時を同じくして妊娠する女子学生、不倫関係に陥った二人のバイオリニストと菌類、パリ在住の中国生まれの劇作家と蛇……。メキシコシティ、パリ、コペンハーゲンを舞台に、夫婦、親になること、社会格差、妊娠、浮気などをめぐる登場人物たちの微細な心の揺れや、理性や意識の鎧の下にある密やかな部分が、人間とともにいる生き物を介してあぶりだされる。(版元ドットコムより)
私にとって初めての、ラテンアメリカ文学の翻訳です。
一昨日、見本を受け取り、ときどき手にとって表紙をなでているうちに、いくつもの偶然が重なってこの本がここにあることを改めて思い、人生の不思議に打たれています。
後書きにも書いたのですが、この本は、イギリス人の若い翻訳家が激賞しているのを見て手にとりました。ですが、そもそも、そのイギリス人の翻訳家に出会ったのは、2012年の夏にロンドンで開催されたIBBY(国際児童図書評議会)世界大会でした。児童文学関係の大会です。
IBBYの世界大会は2年に1度開催され、2010年はスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラで、2014年はメキシコシティで開催されました。参加はすべて自費なので、大会参加費や航空運賃、宿泊費などを含めると、相当な負担になります。2010 年と2014年はスペイン語圏だから参加するけれど、ロンドンは行けないと思っていた大会に仕方なしに参加したのは、東日本大震災以降の日本の被災地での読書活動のことをJBBYが大会で発表することになり、その準備に深くかかわっていたからでした。
その大会プログラムの中に、拙訳書『ベラスケスの十字の謎』(徳間書店)の作家、スペイン人のエリアセル・カンシーノさんの作品の一部を2人のイギリス人の翻訳家が翻訳し、その訳文を比べてみるというセッションがありました。そのときの翻訳者の1人が、ロザリンド・ハーヴェイさんでした。ロザリンドさんの翻訳にひかれるものがあったので声をかけてみると、彼女は普段は児童文学ではなく一般の文学を訳していることがわかりました。Facebookで友だちになり、彼女の投稿からネッテルの作品に出会ったというわけです。JBBYでヒーヒー言いながらボランティア仕事をし、自腹を切ってロンドンに行かなかったら、カンシーノさんと親交がなかったら、私はネッテルにあのタイミングで出会わなかったかもしれません。
そして、もう一つの偶然が起きたのは2017年7月6日のことです。その日私は、メキシコの大手出版社の版権担当者に頼まれて、メキシコ大使館で「ラテンアメリカの子どもの本出版事情と翻訳者」という演題で15分ほどの発表をしました。こちらも児童文学関係です。そもそもメキシコの出版社の人とはつきあいが浅く、ノーギャラだし日程もきつかったので断ってよさそうな仕事だったのですが、パワーポイントを作り、日本語で準備しました。
発表は、当日突然、日本語のあとにスペイン語を入れて、逐語通訳の形式でやれと言われて焦りまくり、結局スペイン語訳をまったくつけられないまま、日本語で言うべきこともすっとばし、さんざんだった思い出しかないのですが、帰り際にメキシコ大使館の方から「最後までいられないが、名刺を渡してくれと頼まれた」と言って手渡されたのが、編集者の原島さんの名刺でした。そこで連絡してみると、「読み物、特に女性の作品を紹介していきたい」と私が言ったのを聞いて、「女性作家のもの、やりましょう」と言ってくれて、やりとりが始まりました。
ネッテルのこの作品は、原島さんに出会う前に、海外文学のシリーズを持つ版元にもアプローチしましたが、すべてボツになりました。私には縁がないのかなと思ったこともありましたが、「もう終わり」と思わない限り、終わりにはならないのかも。
最速最短で目的地に至ることが推奨される現代にあって、極めて効率の悪い、遠回りのプロセスをたどって行きついた企画だったわけですが、それがこんな果実につながるとは! 何が幸いするか、わからないものです。「こうすれば、こうなる」みたいにマニュアル化できないところにも、何かがひそんでいることがあるのですね。
内容と関係のないことばかり書いてしまいました。要するに、ただただうれしいです。
しかも、メキシコに詳しい小説家の星野智幸さんに、すばらしいコメントを寄せていただきました。ありがとうございます!
今のメキシコ、ラテンアメリカの女性文学の新しい鼓動を感じてください。
裏話にここまでおつきあいいただき、ありがとうございました。
2021年7月14日水曜日
7月14日・・・
2021年7月7日水曜日
ひとり桃
2021年7月4日日曜日
『2枚のコイン』
大国による搾取が蝕む、美しい世界
17歳、片時もスマホを手放せない“今どきの若者”マル。ボランティア支援リーダーの母親に連れられて、スペインからセネガル北部、ウォロフ族の村にやってくる。そこは、マルの知らない自由で彩られていた。
本当の豊かさとは、支援とは。
SDGsを考えるヒントが詰まった、スペイン発グラフィックノベル
2021年5月22日土曜日
ブクアパラウンジ こぼれ話(1)
5月15日に西日暮里BOOKAPARTMENT 主催の「ブクアパラウンジ -vol.07-」 に呼んでいただき、ミランフ洋書店の話をしてきました。そのときのYouTubeはこちらです。
でも、「ミランフ洋書店を開店したいきさつも話します」とツイッターで予告していたのに、店名の由来くらいしか話せなかったので、ここで補足することにしました。
ほとんどのことを説明した、2011年9月に書いた文章がありましたので転載します。ただ、この記事でも「10年以上前から私は縁あってそこで本を購入」と、はしょって書いた部分をまずは説明します。時は1994年までさかのぼります。
当時スペイン語の本は、都内の専門書店で高いお金を出して買うことしかできませんでした。そんなある日、都内のスペイン語書店のパンフレット置き場で、スペインの書籍輸出会社のパンフレットを見つけました。
「直接買えるなら、願ったりかなったりじゃない!」と思った私は、1994年にマドリードに旅行した際、その輸出会社をたずね、本を売ってほしいと頼んだのでした。
その会社は、本来書店や語学学校にしかおろしていない会社だったのですが、せっかくきたからと売ってくれることになり、その後、その会社から郵送で送られてくるカタログを見てファックスで注文書を送り、本を買うようになりました。
そして、それから10年近くたった2003年、その会社の人が東京国際ブックフェアに来ることになりました。ミーティングを申し込まれて会ったとき、私は日頃から不思議に思っていたことをたずねてみました。それは、その会社が送ってくれるパンフレットには、本ごとに割引率が書いてあるのに、私が買うときにはなぜ割引をしてくれないのかということでした。
すると、「割引は書店の場合だけ。あなたは書店ではないから割引をしていない」と説明されました。けれども、それで終わらないのがおもしろいところです。続けて、こう言われたのです。「でも、せっかくミーティングしたから、これから一律10%だけ値引きしよう」と。そこで、晴れて10%引きでの取引が始まりました。
その2年後の2005年の出来事が、下記の記事に書いたものです。バカじゃなかろうか、と思うのですが、そんなこんなで、今のミランフ洋書店があります。人生はわからないものです。
ミランフ洋書店 ただいま開店中
販売はしてないの
スペイン語の子どもの本専門のネット書店、ミランフ洋書店を開店したのは4年前の2007年の秋こと。「店舗はどこに?」と問われれば「押入れ」と答えるこの書店、翻訳に携わっているはずの私がなぜ、とよく聞かれますが、直接のきっかけとなったのは、開店の2年前、東京国際ブックフェアでのスペインの書籍輸出会社とのやりとりでした。
その年、いつも利用している書籍輸出会社の担当者が来日し、アポイントメントを申し込まれました。通常は書店や学校にしか輸出していない会社ですが、10年以上前から私は縁あってそこで本を購入していました。もともと個人だが特別に、という細々とした取引だったので、会ったら「書店ではないので、今後は売れない」と言われやしないかと邪推し、ヒヤヒヤしている私に担当者はたずねました。「販売はしてないの?」通信添削講座で使う本のまとめ購入はしていたので、「売っていないこともない」と言葉をにごすと、返ってきたのが「じゃあ、今度から書店値引きをするわね」という答え。
汗がふきだしました。積極的に売っているわけではなかったので。ですが、それからしばらくたったある日、ふいに「なら、書店を作ってしまおうか」とひらめきました。インターネットならコストもしれているし、おもしろそうだと思ったのです。
準備期間は2年間
といっても、ホームページも作ったことのない自分に、はたしてできるのか。すべては未知数でしたが、2年間可能性をさぐったうえで判断しよう、と決めました。まず、問題はショップページづくりです。ネットショップ経営の本を読み、市の産業振興センターの無料起業相談に足を運び、ぺージのイメージを固め、ウェブデザインの会社に見積もりを頼みました。しかし、デザイン料は予想以上に高く、維持管理も難しそうで、これは断念。ところが、今の世の中、探せばあるものです。ネットショップ用のパソコンソフトがあるのを知り、見てみると、ショップページのデザインから、買い物かご、受注管理、商品管理まで、素人でも扱いやすくできています。これでいこう、と決めました。
お次は、肝心のショップ名。しかし、響きのよいスペイン語の単語はどれも、何かに使われていました。半年くらい悩んだときでしょうか、カルメン・マルティン=ガイテの小説『マンハッタンの赤ずきんちゃん』の中でmiranfúという語を見つけました。「いつもと違う、何かびっくりすることが起こる」という意味のおまじない。「ミランフ」ならGoogle検索しても何も出てきません。意味も私の思いにぴったりで、うれしくなりました。
店名が決まると、書店開店計画が一気に現実味をおびてきて、売る本を仕入れはじめました。同時に、知人の装丁家にロゴの作成を頼みました。自分でレイアウトするショップが素人くさくなるのは必至ですが、ロゴがあればイメージアップをはかれると思ったからです。これは大正解。美しいロゴに導かれ、予定どおりの2年で開店にこぎつけました。
ショップからの広がり
扱う本は基本的に子どもの本で、ぜいたく品にならず、手ごろな価格で買えるものという方針で、既存のスペイン語書店と競うつもりはありませんでした。まさにニッチビジネスです。もうかればうれしいけれど、忙しくなりすぎて翻訳の仕事にさしつかえると困るので、トントンならOK、でも、扱う本はホンモノを、という気楽な出発でした。しかし、物事というのは、始めてみると思いがけない広がりをみせるものです。その一つが「日本ラテンアメリカ子どもと本の会」の活動です。私が最初に想定していた顧客はスペイン語学習者でしたが、あるとき小学校から注文が入りました。中南米の日系人の子どもたちが大勢通っている学校でした。これをきっかけに、日系人の問題に関心を持つようになり、いろいろあって、会の設立に至りました。手弁当の活動ですが、12月22日、23日には、ラテンアメリカの児童書展を横浜市鶴見区で開催します。
二つ目は品ぞろえです。当初は手間を考えて、スペインからだけ本を仕入れる予定でしたが、だんだんと品ぞろえに欲が出てきて、他国―ベネズエラ、アルゼンチン―の出版社から直接本を買うようになりました。今もコロンビアの出版社と交渉中で、次はメキシコやブラジルの児童書も扱おうかと考えはじめています。また昨年、私自身が愛用しているMaría Molinerの電子版辞書のセール企画して好評だったのはうれしい経験でした。
翻訳が忙しいとあまり力を入れられないときもありますが、この書店自体、翻訳同様、私の表現そのものになってきています。書店という場があるからこその広がりを楽しみながら、これからも細く長く続けていきますので、何かの折にどうぞのぞいてみてください。
2021年4月7日水曜日
スペイン語の出版翻訳者に求められるものとは
「スペイン語の出版翻訳者に求められるものとは」
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概要
「翻訳家になりたい」と言ったとき、大学時代の恩師に最初に言われたのは「食べていけませんよ」という言葉でした。ロールモデルがないなか、どうやってデビューにこぎつけ、翻訳の仕事をとりつけてきたのか、他の言語の場合と違いはあるのか、翻訳者として、どんなことを大切にし、実行してきたのかなど、30年あまりの経験を振り返りながら、ありのままにお話します。









