『この銃弾を忘れない』
作:マイテ・カランサ
徳間書店
2024.12
おとなたちの戦争のさなかに
少年は困難な旅に出る・・・
1938年の夏から秋のスペイン北部を舞台に、捕虜収容所にいる父のもとへ、狼や逃亡兵・ゲリラの潜む200キロの山中を、13歳の少年が愛犬を道連れに旅していく物語です。
この作品を最初に読んだとき、主人公のミゲルが旅の目的を果たせますようにと思いながら、読む手が最後まで止まりませんでした。好んで出かけたわけではないその冒険のなかで、ミゲルが考え、スペイン内戦の実相がちらちらと見えてくるところがいいな、と思いました。
いざ訳してみると、「わからない」「これはなんのこと?」と編集者から指摘がつぎつぎ入り、ミゲルとともに読者にハラハラドキドキしてもらうには、思った以上に説明が必要だったのですが。
内戦下やフランコ独裁時代のレオン地方やアストゥリアス地方の山岳地帯には、フランコ側につきたくなくて逃げた人びとやゲリラ(「マキス」と呼ばれていました)がひそんでいました。
同じような状況下の物語に、『リャマサーレス短篇集』(木村榮一訳 河出書房新社)に収録された「ラ・クエルナの鐘」や「夜の医者」(これは場所は違います)がありますが、ほんとうに恐ろしいんです。
内戦って? ファシズムって? 思想統制って?などを、考えるきっかけにもなる物語です。
映画『パンズ・ラビリンス』『ブラック・ブレッド』などにもつながっています。
30年前に私の翻訳デビュー作ジョアン・マヌエル・ジズベルト『アドリア海の奇跡』を担当してくれた徳間書店の編集者上村令さんと、彼女が引退する前にもう1作!という願いを、ようやくこの仕事でかなえることができたのもうれしいことでした。
徳間書店が隔月に発行している「子どもの本だより」2025年1、2月号にインタビューものせていただいたので、機会があったらご覧ください。
どうか手にとっていただけますように。
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