大学のスペイン語読解の授業でのこと。
4月から専攻でスペイン語を習い始めた1年生は、直説法現在の動詞の不規則変化をひととおり学んで、少しずつ文章を読めるようになってきています。
彼らと今、ある幼年童話を読み進めているのですが、その中にこんな文章が出てきました。
Reconozco que ha sido un coscorrón muy gracioso.
辞書をひくと、次のような意味が出ています。
reconozco はreconocer で「認める」
coscorrón は「頭部への打撃」
gracioso は「おかしい」「面白い」
これをつなげると、「とてもおかしい頭部への打撃だったと私は認める」となります。
でも、こうすると、学生たちも「くすっ」と笑います。そりゃそうですよね。日本語で発話するとき、こんなふうに誰も言わないから。
そこで、つまり、「さっき僕が頭をぶつけたのは、確かにおかしかったよな」ということだよね、というと、学生たちはまた笑って納得します。
ささいな例ですが、翻訳って、こういうことですよね。
辞書は1語1語の意味は書いてあるけれど、たいがいの文はそのままつなげても内容は伝わりにくいものです。
また、その文全体が持つスタイル(上から目線だとか、くだけた言い方だとか…)も、経験がないと読みとれません。もちろん1年生でそこまでは求めませんが。
とはいえ、その1語1語の意味の核をおろそかにして、あいまいなまま勝手に訳してもうまくいきません。
翻訳の本質が見え隠れして、楽しい気分になるひと時でした。
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