2019年4月21日日曜日

バスクの旅(2)サン・セバスティアン その1

ビルバオの後、2日間、サン・セバスティアンを満喫しました。

サン・セバスティアンの目玉は、エレナ・オドリオソラと会ったこと。
彼女の絵本はこれまでに『天のおくりもの』『あくびばかりしていたおひめさま』『アリアドネの糸』(いずれも光村教育図書)を訳しています。



前にこのビデオを見て(バスク語)、橋と川を見下ろす場所に住んでいるのだなと思っていましたが、その橋はスリオラ橋だと、今回の旅でわかりました。


「エレナに会うなら、ミケルにも会えばいいのに。友だちのはずだ」と助言してくれたのは、バレンシアの出版社メディアバカのビセンテ・フェレール。ミケルとは、この7月にあかね書房から刊行になるメディアバカの絵本シリーズ「あしたのための本」の2冊目『独裁政治とは?』のイラストレーター、ミケル・カサルです。
そんなわけで、サン・セバスティアンではまず、このお二人に会いました。

作品から、エレナは物静かな人と思いきや、とても早口でおしゃべり。気さくにさまざまなことを話してくれました。


エレナの最近の作品というと、物語を独自に解釈して口絵で展開した『フランケンシュタイン』、


バスクのクリスマスを描いた『エグベリア』、

アナ・マリア・マトゥーテのアカデミア入会スピーチをカードの絵本にした『森のなかで』など、

変わったフォーマットのものが続いていますが、それらはすべて、彼女自身のアイデアだとのこと。
「大きさはこうで、32ページで、みたいなのはいや」とのこと。

でも、ネルーダの『星へのオードOda a una estrella』、コルタサルの『雨粒がつぶれるAplastamiento de las gotas』、アルゼンチンの詩人アルフォンシーナ・ストゥルニの『土曜日Sábado』は、テクストを解釈がすばらしくて、普通の絵本形式だって、どれも彼女にしか描けない境地に達しているというのに! 
大人の絵本として、この3冊、どこかで出してくれないかなあと、ずっと思っています。



「でも、本にすると思ったようにならないの。今の技術なら、なんでもできると思っちゃうんだけど、そうはいかなくて。ここだって、実物の赤はもっと深くてきれいなのに」と、『森のなかで』の印刷の出来栄えは満足していないようす。
『エグベリア』は、とても好き、とのことでした。

「日本でだって、あなたと仕事をしてみたい編集者はいっぱいいますよ」と言ったら、「とても興味がある」とのこと。「だけど、思い切った形式を提案されたら、みんな困ってしまうかも」と言ったら、笑っていました。

ミケル・カサルの絵も、ぜひ7月に新刊絵本で見てください。こちらが原書です。

ミケルは似顔絵がうまく、この本の見返しには、世界の独裁者の似顔絵が並んでいます。会ったときも、だれか人物のことに話が及んで、私がぽかんとしていると、「こんな人だよ」と、さささっと、ノートに顔を描いてくれました。

この本のイラストレーター紹介文からも、ミケルのサン・セバスティアンへの愛を感じますが、夕方6時ごろ別れたときに、「これからの時間は、コンチャ海岸のほうに歩いていくときれいだ」と、道案内をしてくれました。彼がすすめてくれたウルグル山に登れなかったのが心残り。

日暮れのコンチャ海岸


帰国してから、エレナ・オドリオソラが2020年の国際アンデルセン賞、スペインから画家賞に推薦されたというニュースが入りました。今度はどうかな。

サン・セバスティアンの書店と図書館のことは、また次回。


0 件のコメント:

コメントを投稿