グスティ作
偕成社
本体価格 2800円 →偕成社HP
ダウン症のある息子マルコとの関係を、ラテンアメリカ出身のイラストレーター・グスティが、父親の視点から、かざらない言葉と、ユーモアあふれるイラストで誠実に描きだした作品。ここ2年取り組んできた『マルコとパパ』が、とうとう刊行されました。
最初は受け入れられず、困惑するだけだった自分のこと、家族や周りの人たちの言葉、ありのままのマルコを愛するようになったこと、マルコのお気に入りの遊びやさりげない日常の一コマ、そしてマルコをはじめ障害のある子ども・人々と共に生きることの意味が、シンプルな言葉と、見るものの心をつかむイラストレーションで綴られる。(偕成社HPより)
この本との出会いは、2014年、メキシコシティで開催されたIBBY(国際児童図書評議会)の世界大会。インクルージョンのパネルディスカッションで、グスティがこの本について話すのを聞いたときでした。
グスティはアルゼンチン出身で、長くスペインで活躍しているイラストレーターです。挿絵の仕事などを入れると、たぶん100点以上の本を手掛けています。日本語に翻訳されている作品もあります。たとえば、こちらのコラージュの作品『ハエくん』(フレーベル館、絶版)。オチは奇想天外です(知りたい方はぜひ図書館へ!)。
とても絵のうまい人、という印象しかなかったのですが、その時はじめて、グスティにダウン症のあるお子さんがいるのを知りました。
そして、とりよせた原書を偕成社の編集者Sさんにお見せしたのはたぶん3年前。145ページ、オールカラーというとんでもない企画をやろうと言ってくれたSさんの勇気がなければ、できなかった本です。
さらに、もともと手描き文字が中心の原作を、手描きのあたたかさを残しつつも、読みやすい日本語版に変身させてくれたのは、デザイナーの鳥井さんのお力でした。日本ダウン症協会の方に、ゲラの段階でていねいに読んでいただいたのも、この本にとってなくてはならないことでした。
まさに「愛」のこもった、こうしたプロセスに支えられてできた本です。
ありがとうございました!
3月20日と3月24日には、次のイベントが予定されています。
出版の裏話など、できあがるまでのことをいろいろお話しますので、どうぞいらしてください。
◆3月20日(火)18:30~20:00(終了後サイン会)
世界ダウン症の日記念トークイベント
『マルコとパパ』と『弟は僕のヒーロー』が教えてくれること
@ブックハウスカフェ(東京都千代田区神田神保町2-5 北沢ビル1F)
参加費:1500円
→イベントお知らせページはこちら
イタリア語の翻訳家関口英子さんとご一緒に、それぞれの作品のビデオも見ながら、障害を扱った作品のイタリアやスペインの出版事情、翻訳のことなど、お話します。
◆3月24日(土)19:00~
代官山えほんのはなし
『マルコとパパ』(偕成社)『もしぼくが本だったら』(アノニマ・スタジオ)刊行記念
「父と子」について語る
@代官山蔦屋書店 1号館2Fイベントスペース
参加費:1000円
→イベントお知らせページはこちら
3月に出た絵本とともに、コンシェルジュの山脇さんのご案内でお話します。これまでの翻訳の仕事のことはもちろん、子連れ留学のこと、マイナー言語の翻訳者のサバイバルにも触れるかも。
2月27日には、駒込のBOOKS青いカバで、デザイナーの鳥井和昌さんと一緒に「日本版『マルコとパパ』ができるまで 翻訳とデザインと」というトークをさせていただきました。
このイベントについては、以下をご覧ください。
駒込のギャラリーときの忘れものブログ 小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第8回
偕成社イベントレポート
出版されたら、本は独り歩きしていくものですが、ひとつだけ弁護したい点があります。
この本について、「子どもの本と言えないのでは?」という意見も聞こえてくるのですが、私としては、やはり子どもたちに読んでほしいと思って翻訳しました。小学校中学年の読者にも届くような訳文を心がけたつもりです。
父親の視点で書かれていますが、グスティの「ふつうって、いったいなんだろう。障害って、なんだろう」という問いかけは、この本を通して子どもの読者も考えていくでしょう。お兄ちゃんのテオの姿は、セシリア・スドベドリ『わたしたちのトビアス』(山内清子訳、偕成社)を思いださせます。
だから、大人も子どもも手にとってくれるといいなと思っています。
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