10名の作家の11篇の短編を対訳で注とともに収録した語学書です。
2年前、『名作短編で学ぶイタリア語』という本が出たとき、ほかの言語でもという出版社の意向を受けて、イタリア語の翻訳家の関口英子さんに声をかけていただいたのがきっかけです。関口さんとは、まったく面識はなかったのですが、語学学校で講読や翻訳を教えているという共通項から、目をとめてくださったのかもしれません。
イタリア語もお二人で作っているので、これもだれかとできないかと思い、声をかけたのが網野真木子さん。日本ラテンアメリカ子どもと本の会を立ち上げたとき以来のおつきあいで、快くひきうけてくれました。
短編と言っても、対訳で載せるとなるとごくごく短いものに限られ、また、約10篇のうち、著作権料を払うものは4、5篇にという条件があり、国もとりまぜたいし、難易度もいろいろにしたい、なるべくこれまで翻訳されていないものをと、まずは作品探しから始まりました。
著作権をとる作品をしぼりこむまでに半年以上かかり、著作権の手続きもなかなかすんなりはいきませんでした。スペインのどこのエージェントが扱っているかをこちらで調べたり、ペルーのリベイロに至っては、個人的なつてをたどってようやく著作権者がわかったり。
載せられなくてとても残念だったのがアナ・マリア・マトゥーテ。いくつか候補で訳してみましたが、著作権をとるのは4つにしましょうということになって泣く泣くあきらめました。
メキシコの作家が入れられなかったのも残念でした。オクタビオ・パスで、手頃な長さのしゃれたものがありましたが、翻訳がすでに出ていたのであきらめ、また、メキシコの著作権保護期間は100年なのでパブリックドメインの作品を探すのも困難だったのでした。
私が担当したのは、ベッケル、リリョ、ルゴーネス、マリーアス、リャマサーレスです。
対訳だからごまかしがきかない怖さが、あとになるほどに大きくなってきてドキドキです。「そこ、違うよ」というところを見つけたら、どうぞそっと教えてください。絶対に何かあると思います。
対訳だからと、原文についついひかれがちになるのですが(これは私の言い訳!)、網野さんの訳文は、それぞれ文体に味わいがあって、とてもすてきです。網野さん、リベイロをもっと訳してみたいと言っています。短編選集を出したいという編集者さん、いませんか?
網野さんと最後までチームワークよく、気持ちよくとりくめたのも幸せなことでした。
この本を読んだ学習者が、「ああ、スペイン語の文章って、こんなふうに読みといていけばいいのだな」と、コツをつかんで、いろんな本に手をのばしてくれたなら、目的を果たせたことになるかなと思っています。巻末で、収録作家以外の作家の短編の原書も紹介しています。
これで今年の仕事はすべて出そろいました。今年の奥付で、訳者、著者として、私の名前が出ているのは次の4点。
そして、翻訳協力した本を入れると、次の7点。忙しかったわけです。どの仕事も、そのときの自分の精一杯ではあるのですが、1つしあげるたびに課題に気づかされて、精進、精進という気持ちになります。この仕事を続けていく限り、自分への不満は次の仕事で返していくしかないので。
来年もがんばろうと、はや年末の気分です。
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